タイトルアイコン

経営者Q&A

不況で賃金2割カットせざるを得ないが(2012年4月)

Q
不況の影響で、前年比で5割の売上減です。従業員に「賃金2割カットか、退職か」を迫らざるを得ないと考えています。賃金カットを行う場合、全労働者から個別同意を得なければ なりませんか、それとも就業規則を改定することで実行できるのでしょうか?
A
会社が生き延びるため労働条件の切り下げもやむを得ない場合があります。 【労働契約法はどう規定しているか】 労働契約の内容の変更について、労働契約法は次のように規定しています。 (労働契約の内容の変更) 第8条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。 (就業規則による労働契約の内容の変更) 第9条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。 第10条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、①労働者の受ける不利益の程度、②労働条件の変更の必要性、③変更後の就業規則の内容の相当性、④労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。(①~④の番号は筆者) 労働条件の変更は合意によって実行できる(第8条)が、一方的に不利益変更はできない(第9条)、ただし就業規則の変更が合理的であるならば可能で、その合理性の判断基準は、上記第10条の「労働者の受ける不利益の程度」(①)と、 ②~④の「労働条件の変更の必要性」等を比較、考慮する(第10条)というものです。 【経営上の必要性を説明できるかがカギ】 賃金切り下げは、他の労働条件と比べても重大な不利益変更です。最高裁も、「(賃金や退職金カットなど)そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容できるだけの高度の必要性に基づいて合理的な内容のものである」ことを求めています(大曲農協事件)。したがって、経営指標の公開も含め経営上の「高度の必要性」を労働者に誠意をもって説明できるかどうかがカギを握っているといえます。それを抜きに、一方的に就業規則を改定して実行するやり方はトラブルとなりかねません。 【本当に労働者の合意を得たと判断できるか?】 また、安易に「賃金切り下げを受け入れる従業員とは雇用を維持するが、受け入れてもらわなければ辞めてもらう」などと二者択一を迫るやり方は避けた方がいいでしょう。こうしたやり方は裁判でもあまり認められていません。仮に労働者が賃下げに合意する書面を提出したとしても、後で「強迫されたから」「解雇されるのを避けるためやむを得ずサインした」と言わ れかねません。 労働者にさまざまな選択の機会を与え、本当の意味での納得と合意を得ることです。たとえば、一部休業(休業手当の支払いは当然)、希望退職の募集、労働時間の短縮、休日の増加、関連企業への就職のあっせん等々のメニューを用意して良く話し合ってください。
鎌田 勝典(中央区支部) 社会保険労務士法人 オフィス・サポート TEL. 03-6280-3925 FAX. 03-6280-3926 http://officesup.com Mail:k.kmt@officesup.com
戻るボタン
経営を磨きたい 経営の相談をしたい 交流したい 人を採用したい